石風呂シンポジウムのご案内【1月28日(日)國學院大學にて】
新年が明けたと思っていたら、早くも半月が経ちました。
日に日に寒さが増しておりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
この度、1月28日(日)に國學院大學にて行われます
石風呂シンポジウムのご案内でメールさせていただきました。
〝石風呂〟といわれても馴染みがない方がほとんどだと思います。
西日本を中心に暮らしの中で利用されてきた熱気・蒸気浴施設で、
最盛となる江戸時代末頃には西部瀬戸内海沿岸を中心に
約500カ所の石風呂が存在していたと思われますが、
減少の一途を辿り、今現在は利用できる石風呂は数カ所残るのみとなっています。
唯一、通年営業を続けてきた広島県竹原市忠海の『岩乃屋』の石風呂も
惜しまれつつも、2017年の11月で閉店となりました。
私は、この岩乃屋さんの石風呂を初めて体験したときに、
あまりの気持ちのよさに衝撃を受け、また老若男女が思い思いに過ごす
その石風呂という〝場〟の雰囲気にすっかり魅了され、
2017年の2月から映像での記録を始めました。
岩乃屋さんが閉店した後は、山口県岸見の石風呂、香川県塚原のから風呂、
山口県防府市阿弥陀寺などを巡り撮影を続けました。
撮影は、カメラマンの大久保千津奈さんに担当していただきました。
この撮りためた映像を、個人的な作品に留めるだけではなく、
文化財としての貴重な記録としても活用できないかと思案しまして、
一般社団法人文化財共働さんの力をお借りして、
日本芸術文化振興基金の2017年度民俗文化財の
保存活用活動の助成金対象事業としていただきました。
その事業の一環として、この度1月28日(日)に
國學院大學にて石風呂シンポジウムが開催されます。
石風呂研究の第一人者印南敏秀先生、岩乃屋店主の稲村喬司さんをお迎えし、
映像上映も致します。
石風呂から見えてくる世界は、海のアマモ、山の枝木を利用し、
残った灰やアマモはまた自然に還す、循環する暮らしの営みそのものです。
ぜひこの古くて新しい『石風呂』を通して、
現代の私たちが失いつつあるものを認識し、
これからできることは何かをご一緒に考える時間としていただけましたら幸いです。
多くの方のご来場、心よりお待ちしております。
やしほ映画社 纐纈あや
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「石風呂」にみる有形と無形の民俗文化財の連環の可能性
〜環境と共存する民俗文化財をどう活用するか〜
【日時】2018年1月28日(日)13:00 〜 16:50
【会場】國學院大學(渋谷キャンパス)AMC棟1階 常磐松ホール
東京渋谷区東4−10−28
※入場無料、予約不要
【基調講演】 印南敏秀(愛知大学教授)
「里海文化における石風呂の役割とは」
【パネリスト】
稲村喬司(広島県竹原市忠海 石風呂「岩乃屋」経営)
石垣悟(文化庁文化財調査官)
纐纈あや(映画監督)映像上映つき
【司会】茂木栄(國學院大學教授)
【主催】一般社団法人 文化財共働
【共催】NPO法人社叢学会、國學院大學共存学プロジェクト、(株) やしほ映画社、
【助成】独立行政法人日本芸術文化振興基金
【協力】國學院大學茂木栄研究室
【問合せ先】一般社団法人文化財共働
〒101-0044 東京都千代田区鍛冶町一丁目6-17 フォルテ神田102
TEL : 090-8010-2296
MAIL : 20180128@iwaburo.bunkazai.link
【開催趣旨】
温泉源が少ない瀬戸内海沿岸の各地では、「石風呂」と呼ばれる熱気・蒸気浴施設が広く普及していた。天然の洞窟や岩山に横穴を掘る、あるいは石積みのドームを作り、その中で枝木を燃やし、そこに海草や薬草を敷いて、海水を蒸発させることもあった。この石風呂で人々は発汗し、疲れや病を癒してきた。最盛となる江戸時代末頃には西部瀬戸内海沿岸を中心に約500カ所の石風呂が存在していたと思われる。それが医療の発達や生活の近代化、環境の悪化で枝木や海草などの入手が困難となり、石風呂は姿を消していった。
長く通年営業を続けてきた広島県竹原市忠海の岩乃屋は、伝統的な石風呂湯治を維持してきたにもかかわらず民俗文化財の指定を受けることなく2016年秋に閉場した。遺構は貴重な民俗文化財だが、光があたることなく幕を閉じたのである。
一般社団法人文化財共働では、やしほ映画社が記録した岩乃屋での温浴法の記録映像と、有形文化財としての石風呂遺構の調査を元に、有形と無形の民俗文化財の連環を探る活動をしている。その中で、民俗文化財を守り活用していくには自然との共存・共生が重要不可欠であることに注目するようになった。
本シンポジウムでは、里海文化と石風呂研究の第一人者である印南敏秀氏を迎え、終焉を迎えた伝統的石風呂習俗を入口にして、従来あまり論じられることのなかった民俗文化財と環境の問題に着目し、新しい視点から民俗文化財の保存・伝承・活用を考えてみたい。