岐阜大学で上映をしてきました
「祝の島」を上映していた時も、なんとなく感じていたことだが、精肉店の上映を1年半続ける中で、特に文化人類学や民俗学を研究している方たちが、 映画に反応してくださることがとても多い。それは、ひとつの場所に通い、そこに住む人々と関係を結び、暮らしや文化を理解していくというフィールドワーク の過程と、映画のアプローチに共通したものを感じていただくことがあるようなのだ。そんなことから、研究者のみなさんのご尽力で、大学などで上映していた だく機会が増えている。
今回も、文化人類学者の山口未花子さんが中心になって、岐阜大学での上映が実現した。山口さんは、小さい頃から動物が大好きで、そこから人と動物との関係をテーマにして、カナダの狩猟民カスカの人たちと出会い、共に暮らしながら、その技術や文化を研究してきた人だ。
岐阜でお世話になった二日間、山口さんと色々な話しをしたが、会話するたびに、新しい視点、新しい言葉、驚きがあり、森林の中で深呼吸をするような感覚に なった。私は、人前で映画のことについて、何度も何度も繰り返し話しをするうちに、どんどん自分の中で言葉が固定化・定型化してしまうことに、どうにもならないジレンマを抱えている。だから、こうして誰かと出会い、その人の世界を通して、また自分の世界や自分の言葉を捉え直していく機会が得られたときは、大きな喜びを感じる。きっとわたしは、山口さんを通して、カナダの深い森の空気に触れていたのではないかと思う。