古民家

自分の住処を自分で作る

20代の頃、自分の道を模索しながらウロウロ、ぐるぐるしていた時期に、自分の生き方を方向づけるような出来事がいくつかありました。岡田淳さん、直子さんが主宰するアースマンシップで学んだことも、その中のひとつでした。
その時から直子さんは、いつかアースマンシップ村をつくる!とことあるごとに宣言していました。言葉にすることで、いつか必ず実現するから、と。自然の恵みと先人からの知恵を生かしながら、ひとりひとりが大地に根ざし、協働して生きる場所。そんなイメージが伝わってきました。

そのアースマンシップ村の拠点となる場所が決まったと伺ったのは、今から3、4年ほど前のことでしょうか。それは山梨県武川村の広々とした田畑と築100年は悠に越える古民家でした。江戸後期に建てられたという家は、その後、改築が繰り返され、最後はしばらく空き家になっていたこともあり、まずはこの古民家を生き返らせることからはじめよう、と「柳澤たてもの塾」がスタートしました。

建築家の日高保さんと個性溢れる一流の職人さんたちのもと、有志が集まり、ワークショップ形式で作業は進んでいきました。日高さんは、昔ながらの工法と身近にある自然の材料を生かしながら、施主さんやその周りの人たちと一緒に住まいを作っていく、ということを大切にされています。(詳しくは「きらくなたてものや」をご覧ください→ http://www.kirakunat.com/

私と石井も、昨年から、カメラを持って参加させていただくようになりました。(もっぱら、私は作業するのが楽しくて、撮影は石井に任せっきりでした。)

ひとつひとつの工程を体験する度に感じたことは、素材も作業も、実にシンプルであるということ。竹、シュロ縄、土(粘土、山土、砂など)、ワラ、消石灰、にがり、水、と自然界にあるものが基本です。それを乾燥させたり、混ぜたり、練ったり、発酵させる。それらを切る、割く、結わく、塗る、叩く。
作業は、ひとりでは途方に暮れる。自分の家族だけでも、まだまだ人手が足りない。もう少し多くの人手があるといっきに進む。ひと昔前には、集落単位でこの作業が行われていただろうことが、容易に想像できます。

ここでも竹が大活躍。強度があって、柔軟性もあって、なんといっても扱いやすい。切って運ぶことひとつとっても、老若男女、誰でもできる。普通の木材だったらこうはいきません。つくづく魔法のような素材だなと思います。でも今は竹害、などという言葉も聞かれます。竹林は宝の林です!

そして驚いたのが、土間作り。なにも難しいことはありません。(正確にいえば、水平をとったり、光沢ある表面にするのは高度な技術が必要とのことですが)ただひたすら叩いて、叩いて、叩くのです。1日叩いて、ひとりで出来る範囲は畳一畳にもならないくらい。でもそうして出来上がった土間は、セメントで固めたものとは、全く違う風合いです。作業から数ヶ月後に訪ねた家の土間は、しっとりしていて、なんだか温かく、足裏に馴染むのです。みんな、靴で歩くのはもったいないと裸足で歩いていました。(土間の意味がない?笑)

いつから私たちは、家は設計士や大工、業者、ハウスメーカーが作るもの、と思うようになってしまったのだろう、と思います。自分の住処を、自分で作る。ゼロから作ることは難しくても、少しでも自然のものを使って、自分たちで手をかけていくことはできるのではないかと思います。そうした自分の家づくりに、私もいつの日か挑戦したいと思います。

こうしてあらためて映像で見ると、とても面白く、貴重な貴重な学びの場でした。このような機会を作っていただいたことに、心から感謝しています。

この古民家は「鷲の家」と名付けられ、アースマンシップの新たな拠点となっています。この家で近日に行われるプログラムは、全体を学ぶ学校【夏】。ぜひ一度、この家で豊かな時間を過ごしてみてください!

Earthmanship School 全体を学ぶ学校 【夏】
森・土・種から見える全体性
7月20日〜23日 北杜市武川町にて
HP:http://earthmanship.com/wp/?p=9958
FB:https://www.facebook.com/events/439002040210955/

動画撮影:石井和彦

https://youtu.be/5Yq2ZxUN6S0