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石垣島 白保の空の下で

石垣島〜竹富島の旅は、濃密で、大切なことがいっぱい押し寄せてきて、なかなか言葉にまとまらないのだが、少しずつ書いていこうと思う。
色とりどりの美しい生きものたちと出会えた海や、思わず歓声をあげた星が埋め尽くされた夜空、強い陽射しを溜め込んだパワフルな植物たち、そしてなにより、深く慈愛に溢れた眼差しの人々との出会いで、私の体は喜びいっぱいに満たされた。人と交わる、その土地を訪れるという中で自然に行なってきたエネルギーの充填が、自粛、制限という名の下で、個人個人に切り離されてしまってきたのだから、みんなどれだけしんどいことだったか、とあらためて思う。
石垣白保での上映会は、今年の春から主催者のみなさんが、上映に向けて準備を進めるも、コロナ感染状況下で2度ほど断念し、今回ようやくの実現となった。主催は白保肉用牛生産組合さん。40軒ほどの組合員さんが協賛金を出し合って、白保の人たちが無料で参加できる映画上映会という形を取っていた。そのことを聞いた時から、胸がいっぱいだった。
昨年、20年務めてきた組合長が、次の世代へパトンタッチし、若い世代が取り仕切る初めての催しとのこと。前日の夜から、生きもの相手の忙しい仕事の合間を縫って、若い農家さんたちが、和気あいあい、てきぱきと牛汁を仕込み始める。牛骨をじっくり煮込んでダシをとる牛汁は、祭りやお祝いになると大鍋で作る集落の人たちの大好物。
当日は、雨が降ったり止んだりを繰り返し、室内の会場も準備する。コロナで長らく使っていなかった公民館を大掃除してくださったそうだ。午後には晴れ間がのぞき、野外会場で決行となる。日が暮れ始める頃、徐々に人が集まってくる。子どもたちは草はらを駆け回り、大人は牛汁やビールを飲み、おしゃべりを楽しみながら上映を待つ。待ちに待った牛汁を買いに、鍋を片手にやってくるばあちゃんは、映画を観ずに帰っていく(笑)そして映画が始まる頃には、既に牛汁完売!
ちょうど暗くなった7時、上映開始。前方にはブルーシートを敷き、後方には椅子席。みんな思い思いのスタイルで映画を観る。子どもたちもたくさん来てくれた。途中、おしゃべりをしたり、ふざけて走り回っても、夜空に吸収されて、ちっとも気にならない。みんなで、じっと映し出された光を見つめ、耳を澄ます。私にとって幸せの光景そのものだった。
(次につづく)
写真:家中茂さん
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