natsuko

明日、日本に帰国します!

長い長い旅が終わる。18日に日本を経って2週間、イギリスはロンドン、マンチェスター、エクセターを巡り、ドイツはベルリン、イタリアはヴェネチア、トリノを訪れ、明日の朝一の飛行機で日本へ帰る。

今回の旅の発端は、国際交流基金ロンドン日本文化センター主催のフィルムフェスティバルに「ある精肉店のはなし」を上映していただくことになったからなの だが、特にゲストに呼ばれていたわけではなく、当初は映画上映のみの話だった。でもやしほの水由さんに、こんな機会はめったにないのだから、上映に合わせ てイギリスに行っちゃったら?と言ってもらい、そうか!とひらめいたのだ。私の父が、最後にもう一度、海外の友人たちに会いたい、と常々口にしていたこと を。
鉄鋼業の会社の渉外部で仕事をしていた父は、一年の3分の2は海外出張に出ているような人だった。今年80歳を迎え現役を退いて20年。海外へ行くなら最 後のチャンス。よし、両親と一緒に友人たちを訪ねる旅を計画しよう、と思いたったのだ。3人きょうだいの末っ子の私は、上の2人が結婚して家庭を持ったこ とをいいことに、自分のしたい放題してきた。やりたいと思ったことはなんでもやり、仕 事も転々とし、終いには突然映画を作ると言い出した。いつもそんな私に呆れながらも、反対することは一度もなかった。(というか、反対しても頑固な私は いっさい聞かないから、とあきらめていたのだと思う)ここはひとつ、親孝行なるものをしてみようか、というわけだ。

イギリスでは、急遽国際交流基金の方でセッティングしていただいたトークイベント、上映会場でのQ&Aに付き合ってくれながら、映画を観にきてくれたトムさん夫妻と父は30年ぶりの再会。私は自由学園の同級生と20年ぶりの再会。
ベルリンでは母の幼なじみの夏子さん一家のお宅に泊まらせていただく。話しが尽きることなく、本当に嬉しそうな両親。私は合間に、韓国光州のアジアカルチャーセンターでのエキジビションの作品づくりで知り合ったアンジェラさんと念願のご対面。
イタリアヴェネチアでは、父のイタリア人の親友の家族を訪ねる。当人は既に他界しているが、家族が温かく迎えてくださり、父は感極まって涙、涙。
そこから私はひとりトリノに向かい、震災直後に祝の島を観て、朋・アミーチを立ち上げ、映画をイタリア国内で紹介してくださり、グランプリをいただいシチ リア環境映像祭へのエントリーから翻訳まで、力を尽くしていただいた和田千重さんを訪ねる。一泊の短い滞在だったが、千重さん、フランコさんのおかげでト リノを満喫。食べるもの食べるもののおいしいことったら!

持病があって、足もだいぶ弱っている父の体調を最優先にしながらの旅は、アクシデントの嵐だった。考えてみれば、80歳にもなって、海外に2週間、それも かなり詰め込んだハードスケジュールの行程に、娘の身勝手な気持ちによくぞ付き合ってくれたものである。この刺激が、また帰国した後の活力につながること を願いつつ。

思えば、富士登山から始まった今年。1月が終わる頃から、私の中でずっと止まっていた時計が動き始めた。一日、一日がまるで一年のような質量で、猛スピードで、めまぐるしく変化してきた。気持ちが追いついていくのに精一杯だった。でもとても幸せだった。
日本に戻ったら、また新しい旅が始まる。今度の旅は長くなるぞ…。